2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧
・乗組員が手をくだせる制御装置は、船室の中央シャフトにある二つの押しボタンだけだった――その一つには『オン』、もう一つには『オフ』と記されていた。『オン』のボタンは、火星からの飛行を開始するだけのものである。『オフ』のボタンは、なににもつな…
・もうそこにサヨナラという語があって一問一答式の夕暮れ 俵万智『サラダ記念日』
・玉ネギをいためて待とう君からの電話 ほどよく甘み出るまで 俵万智『サラダ記念日』
・誰を待つ何を我は待つ〈待つ〉という言葉すっくと自動詞になる 俵万智『サラダ記念日』
・ヨコハマは港の見える丘公園恋人同士に見えるであろう 俵万智『サラダ記念日』
・「30までブラブラするよ」と言う君の如何なる風景なのか私は 俵万智『サラダ記念日』
・愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う 俵万智『サラダ記念日』
・長い長い未来の前の 一瞬の今 苦悩なき猫は でかくて元気 生まれかわったら また会おうや なんて 一方的に 約束してしまいました 大島弓子『綿の国星』
・夜になると強い風 になり 疑問やら がっかりやら ものすごい期待 やらで 一晩中 目がさえた 闇は むらさき色になり 月は満月に近づき 遠くで風が 高い波長で カモーン とよんだ 大島弓子『綿の国星』
・戯曲を書き上げた朝は、これはもう、ザマアミロと思うほどにすがすがしい。その瞬間、私の中には無前提に勇気がわいてくる。「まったく意味のないこと」を繰り返す演劇という営みは、だから人生に少しだけ似ている。 平田オリザ「戯曲のようなあとがき」(…
・「怒らないのは優しいからではない。君たちの人生なんて、どうでもいいと思っているからだ。私は君たちに立派な人間になってもらいたいとは思っていない。ただ、この芝居の成功だけを願っているし、そのための計算だけをしている。怒らないのは、ただそれ…
・戯曲のト書の最初に「朝」と書く。書くだけでいい。それで、その世界は朝になる。これは詩や小説にはない魅力だ。戯曲の場合には、舞台という人工的な世界が想定されている以上、「朝」という言葉はすでに、単なる描写ではなく決定事項である。 「朝」と書…
・芸術作品は、その作品については、よほど特殊な場合を除いては、その責任は一人でしか負えないのだと私は思う。役者が作品に関してまで全責任を負うことは不可能だ。役者の責任は、一つの台詞、一つの動き、一つの意識の流れ、それを全うすることだけで、…
・僕たちの心には幾つもの井戸が掘られている。そしてその井戸の上を鳥がよぎる。 村上春樹『1973年のピンボール』
・もし人間が本当に弁証法的に自らを高めるべく作られた生物であるとすれば、その年もやはり教訓の年であった。 村上春樹『1973年のピンボール』
・ちょうど無名の者がわれわれのかわりに罪を犯してくれるように、戦争が僕の憎悪に助力してくれることを期待していたのだった。 ラディゲ「肉体の悪魔」(『肉体の悪魔』より)
・「あんたを知る前は、わたし、幸福だったわ。婚約者を愛してると思い込んでたんですもの。わたしをよく理解してくれなくても、わたしは許してたわ。わたしがあの人を愛してないことをわたしに教えたのは、実はあんたなのよ。わたしの義務は、あんたが考え…
・わたしは、いま、生き方を燃やしているのだ。ちょうど、いまごろ地球の上で、燃えて消えてしまおうとしている、あの生き方みたいな。 レイ・ブラッドベリ『火星年代記』
・「なんとか始末をつけてくれたら、きみはおれよりえらい人間だ」 レイ・ブラッドベリ『火星年代記』
・数には慰めがある。 レイ・ブラッドベリ『火星年代記』
・「それから――そう考えてお気がすむのでしたら、このわたしはある夏の日に気がふれて、とうとう正気に帰らなかった男だと思って下さい。そう思えば、すこしは気が楽になりませんか」 レイ・ブラッドベリ『火星年代記』
・大きい美しいものを損なうことにかけては、わたしたち地球人は天才的なのですよ。エジプトのカルナックの寺院のまんなかにホットドック屋を作らない唯一の理由は、そこが人里離れていて、商業的に不利だからです。 レイ・ブラッドベリ『火星年代記』
・すべてはあたりまえで日常的なものとなっていた。そしてまさに勲章がこのように無限に、日常的に、複製されうるということが国家の真の力を示していた。 ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』
・共同体は、その真偽によってではなく、それが想像されるスタイルによって区別される。 ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』