2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧
■「さあ? そうじゃございませんわ。たしかにそれとも違っていました。そんな平凡な名前じゃあなくって、こうなかなか覚えられないような、むずかしくて滅多にないような名で……あたくしはそれを聞くと、それだけで胸がこうどきどき……一体この世にこんなふう…
■いくらでも借金ができるということは、これは君には分からぬ大したことですよ 北杜夫『楡家の人々』
■「お寝(やす)みなさいとはなんです? お寝すみあそばせとおっしゃい」 「さようなら、というのは下品なお言葉です。御機嫌よう、とおっしゃるものよ」 へ、さようでございますか。それはあなた方は学習院出のお姫さまでございましょうからね。へ、てめえら…
■そして、みなさんに申しあげますが、もしも、人間がその教訓を学ぼうとしないなら、かれらは、火に焼かれ、血を流し、苦しみもだえながら、それを学ぶときがくるでしょう。おやすみなさい。 プリーストリー『夜の来訪者』
■あゝ、さば、薔薇(さうび)よ、 物を、云つてよ、 物をし、云へば、 答へよう、もの。 答へたらさて、 もつと、開(さ)かうか? 答へても、なほ、 ジツト、そのまゝ? 中原中也『中原中也全詩歌集』
■南無 ダダ 足駄なく、傘なく 青春は、降り込められて、 水溜り、泡(あぶく)は のがれ、のがれゆく。 人よ、人生は、騒然たる沛雨(はいう)に似てゐる 線香を、焚いて 部屋にはゐるべきこと。 中原中也『中原中也全詩歌集』
■夏が來た。 空を見てると 旅情が動く。 僕はもう、都會なんぞに憧れはせぬ。 文化なんぞは知れたもの。 然し田舎も愛しはえせぬ、 僕が愛すは、漂泊だ! 「生活」か? そんなものなぞあらうた思はぬ。 とんだ美事な美辞に過ぎまい。 どうせ理念もへちまもな…
■元氣です―― 時は春、京都は桃色、 晝は歩き夜は飲み、 ――泣き笑ひより悲しいはない 中原中也『中原中也全詩歌集』
■あゝ、家が建つ家が建つ。 僕の家ではないけれど。 中原中也『中原中也全詩歌集』
■僕は人間が笑ふといふことは、 人間が憎悪を貯めてゐるからだと知つた。 人間が口を開くと、 蝦茶色の憎悪がわあツと跳び出して來る。 中原中也『中原中也全詩歌集』
■俺にはおもちやが要るんだ おもちやで遊ばなくちやならないんだ 利得と幸福は大體は混る だが究極では混りはしない おれは混らないとこばつかり感じてゐなけあならなくなつてるんだ 月給が筯えるからといつておもちやが投げ出したくはないんだ 俺にはおもち…