机上、枝条、そのほか

机上、枝条、そのほか

アフォリズムのリハビリテーション #514

・「あんたを知る前は、わたし、幸福だったわ。婚約者を愛してると思い込んでたんですもの。わたしをよく理解してくれなくても、わたしは許してたわ。わたしがあの人を愛してないことをわたしに教えたのは、実はあんたなのよ。わたしの義務は、あんたが考えているようなものじゃないわ。それは、夫を裏切らないことじゃなくて、あんたを裏切らないことよ。さあ、帰ってちょうだい。後生だから、わたしのことを悪い女と思わないでね。わたしのことなんかすぐに忘れてしまってよ。そうよ、わたし、あんたの一生を不幸にしたくないわ。わたし、泣いてるのよ。だってわたし、あんたにはお婆さんすぎるんですもの!」

ラディゲ「肉体の悪魔」(『肉体の悪魔』より)