机上、枝条、そのほか

机上、枝条、そのほか

アフォリズムのリハビリテーション #532

・戯曲のト書の最初に「朝」と書く。書くだけでいい。それで、その世界は朝になる。これは詩や小説にはない魅力だ。戯曲の場合には、舞台という人工的な世界が想定されている以上、「朝」という言葉はすでに、単なる描写ではなく決定事項である。

「朝」と書いた瞬間に、人は劇作家になる。だから劇作家になるのはたやすい。しかし、「朝」と書いたことを引き受けることは難しい。世界を作ることはたやすいが、世界を引き受けることは難しい。

平田オリザ別役実の罠」(『現代口語演劇のために』より)